カンボジア支援訪問 感想記
私は、これまでも海外公演はしてきたが、東南アジアの旅はこれが初めてだった。
プロの人形劇団に所属していた25年間、その後独立して3年目になる私は、国内での演劇ワークショップは数多く行ってきたが、海外で本格的に行うのは、本当に久しぶり。
しかも、東南アジアの子供と接するのは初めて。不安半分、期待半分の旅立ちだった。
昨春、「UKIYOE」で共演した東駒子さんより、カンボジアの小学校やスラムの子供たちへの支援ワークショップをやってみないかとの誘いがあった。
誘いを受けたものの、行きの飛行機の中では、いったい私になにができるのだろうかと自分に問いかける始末。
何はともあれカンボジアでのワークショップが始まった。全部で5箇所。
おはなしキャラバンの石竹さんはじめ7人によるオムニバス形式。
耳の聞こえない私の役割はパントマイム的表現。
「ひょっとこ」、「カメラマン」、「獅子舞」、「できるかな」。
どうなることかと不安であったが、私のパフォーマンスを見た子供たちは、夢中になって目を輝かせていた。
カンボジアの子供も日本の子供もほぼ同じ反応をしてくれることが嬉しかった。
私は、支援に来たというよりも、子供達と一緒に楽しい空間を作れたと感じ、安堵した。
ワークショップのために訪問した時の大歓迎振りや、パフォーマンス中の子供の笑顔、参加していたある子供の親の「子供の笑顔を見ることができて嬉しい」というコメント、終わった後に見送ってくれた大勢の人の姿に、私は感動し、またやりたいと感じた。
ところで、ワークショップで出会った子供たちは、ほとんどが靴を持っていない。子供たちは、それを恥ずかしがり、なかなかはじめてのお客さんに心を開くことが難しいそうだ。
これは、ワークショップをすべて終えた後にSVA事務局の方が教えてくれた話。
この言葉は、「ワークショップはとりあえずうまくいったなあ」と考えていた私の心に一石を投じるものだった。
果たして私のパフォーマンスは、自分が思うほど彼らの心に響いていたのか、彼らと本当の意味で関係を作ることができたのか、相手を尊重しあう関係作りとは何か。まだまだこれかららしい。[2008年]