~波無烈斗の演出ノート~

 劇作家シェイクスピアの「ハムレット」は、前からやりたかった作品でした。
 米内山さんから声をかけられ、今まで誰もトライしなかった無言劇としての「ハムレット」、とても興味深い企画だと思い、一瞬でチャレンジしてみたくなりました。
 実際にやってみると、どういった無言劇になるのか、見当もつかなくなり、台詞で成り立つシェイクスピアの世界をどう表現すればよいのか非常に悩みました。
 しかし、ノンバーバルコミュニケーションで物語ることで、普段の台詞劇より刺激的に真実を伝えられるよう、試行錯誤しながらアレンジしてみました。
 台詞は全てカットしました。身振りや表情のみの無言劇を通して観客の皆様に、これまでなかった働きかけができたと思っています。
 「ハムレット」は、究極に言ってしまえば単純な復讐劇、サスペンスドラマです。ハムレットの生きていた家の人間模様からアプローチして、物語を進めることで分かりやすく伝えられたと思います。
 また、舞台装置は、「何かを紡ぐ・何かを隠す」「赤い糸は、何を語るのか」、そんな意味をも込めてプランを作り、演出しました。
 音楽は、目に見えるようにしました。音楽担当の齋藤徹さんとは、三年前私が演出した「牡丹と馬~遠野物語~」公演の時から何度も一緒に仕事をしました。新しい仕事の度に新しいスタイルを作る大胆さに驚かされています。
 今回は、無言劇ですので「ハムレット、復讐を」という台詞の代わりに、そのイメージを観客の皆様に身体全体で投げかけましたが、目に見える音楽が表現を深めたと思っています。
 次は、共演者についてです。
 アンディ・バスニックさんとは、彼が日本に来たときには、たまに会いましたが、共演の機会はないとずっと思っていたのです。今回、共演できてよかったです。今回のハムレットの舞台で、どんなことに挑戦したいのかアンディさんにたずねました。彼は『今までとはまったく異なる、何か新しいことに挑戦したい』と大いに張り切っておしゃってくれました。アンディさんとの共演することで今までにない斬新なものが創れるにちがいないという期待がありました。アンディさんの舞台にはバイタリティーがあり、エネルギーがあります。クローディアスの心理を分析し、真剣に表現する姿には誰もが心を打たれたと思います。
 それから、高橋愛さん、東駒子さん、數見陽子さん、米田陽一さん、齋藤徹さん、田辺和弘さんという優れたキャストたち、美術安元亮祐さんと仕事が出来ることは、演出の僕にとっては、大変興奮しました。
 キャスト全員が全く台詞無しで全編を通して生身で表現することで、よりドラマチックな作品に仕上がりました。それぞれがその場で即興し、その瞬間に身を任せて自由に表現することができました。臨場感たっぷりのエキサイティングな演技が生まれました。
 宝探しにも似た喜び、頼もしいその出来映えの素晴らしさに、驚きました。僕にとっていろいろものを得られる機会となりました。
 「波無烈斗」公演に観に来ていただいた皆様にとっても、何かを得られる機会となれば幸いです。

LinkIconアルバム

「Hamlet 波無烈斗 ハムレット」上演までの流れ

『hamlet 波無烈斗 ハムレット』最終稽古の風景 2015年7月22日

七夕の前日、東京の某所で初顔合わせ! 役者の皆さん、真剣な目つきそのものなり!(2015年7月6日)

アンディ・バスニックアンディ・バスニック

庄﨑隆志庄﨑隆志

高橋愛高橋愛

數見陽子數見陽子

東駒子東駒子

●無言視覚劇●●●●


構成・演出:米内山明宏
振付・演出:庄﨑 隆志
空 間 美 術:安元 亮祐
[舞台スタッフ]
HITODE・STAGE
美 術 制 作:酒井  郁
舞 台 装 置:榎本トオル
写 真 撮 影:松田 一志
宣 伝 協 力:プラスヴォイス
[キャスト]
アンディ・バスニック
庄﨑 隆志
髙橋  愛
齋藤  徹(コントラバス)
田辺 和弘(コントラバス)
數見 陽子
東  駒子
米田 陽一(特別出演)

[1]7月24日(金)14:00〜
[2]7月24日(金)19:00〜
[3]7月25日(土)14:00〜
[4]7月25日(土)19:00〜
[5]7月26日(日)14:00〜

[〒161-0034 東京都新宿区上落合1-17-9]
西武新宿線【下落合駅】下車徒歩1分
予約制(前売券はありません)
3000円[当日 4000円]
kazenoOuti
e-mail: sho8113sinryu@ybb.ne.jp
fax: 045-974-1620(10:00〜22:00)
LinkIcon波無烈斗チラシ ( PDF)

 シェイクスピアの悲劇「ハムレット」という無言視覚劇に挑みます。サプライズゲスト出演としてアメリカ聾俳優アンディ・バスニック氏を迎え、ピナ・バウシュ流のタンツテアター(演劇的ダンス)・コンテンポラリーパフォーマンスをお届けします。めったに出来ない初体験です!! 間違いなしです。
 今回の「波無烈斗(ハムレット)」公演は、アメリカ聾俳優アンディ・バスニックと米内山明宏、庄﨑隆志、安元亮祐の共同企画です。四人が刺激しあいながらよりよい表現を観客の皆さまに投げ掛けようと挑戦の日々です。
 手話劇とはまったく違うものを目指しています。様々な即興無言劇の中で、何かが生まれる瞬間に立ち会うというニュアンスでお気軽にお付き合いください。
 美術は安元亮祐、音楽はコントラバス演奏家齋藤徹、コントラバス演奏家田辺和弘、キャストはコンテンポラリーダンス高橋愛、パフォーマー東駒子、パフォーマー數見陽子と米田陽一。何か新しいものを作り出す濃密な時間になるでしょう。是非とも観に来ていただきたい作品です。

2015年5月19日 風の市プロデュース・千里魚眼一同